ZIPANG-7 TOKIO 2020デザイン・色彩実践講座 7―3 「粋と色気 そして もののあはれ」  日本人が心身共に美しくなること、それは平和への願い・・・【寄稿文】一舟・光秀

おかげ横丁の商店猫    作者:もりわじん


不安定で先に希望の見えない国にビジョンが欲しい今、日本の文明のあり方、幸せな次世代のその先の子供達の未来に向けて、大人は表層の初歩的デザイン・色彩にとどまらず、日本人が併せ持つ生き方、暮らし方と人間活動の基本となる、五感とその多くの役割を担う視覚の感性を中心に、わかりやすい身の回りから提案する。


戦争を家庭で実況放送を見る物質文明の終焉に、前回の日本の未来は「粋と色気」にありとし、そしてさらに心の文明の世紀に向けて、研究や創作活動に舵を切ろうと考えている。


全て伝統の中に未来は存在する


SDGsの偉大な先駆文明 伊勢神宮の遷宮を待つ粋で雄大な天空大地の景


20年ごとに場所を交互に入れ替え、建築資材などは順次支社末社に活用され、宝物や工芸品も同様に或いは新たに作り技術も伝承し、農・漁業・食などに関しても、古来の伝統を守り引き継ぐ類を見ない世界がある。このようなシステムこそSDGsの本懐であろう。その聖なる究極のSDGsは、遷宮を待つ内宮の静謐な環境にあり、いつも訪れる度に強く思う。


粋も色気も もののあはれも宇宙の摂理

そして悲しみと慈しみが加わり もののあはれになる。それらは何もおおらかに考えると表裏一体である。文明とは生きる喜びであり、人が生まれ成長し、やがて亡くなるまでの世界のことであるから。その一事例として芸大の同窓生であり、人生の先達であリ、稀有な仕事に人生をかけた内海清美氏に作品をお借りした。


光源氏と紫上 煩悩シーン


内海清美氏は源氏物語の世界や空海、観平家など、和紙による数百体に及ぶ彫塑造形を制作し、ルーブルをはじめ西欧での展覧会で展開し、日本の「もののあはれ」についても4万人の来館者に示し伝えたのではと思って来た。また和紙による静謐と激情と豊穣の日本の造形芸術の物語表現は、多くの人々に共感を得たと思う。


環境デザインをとうしてデザインを進めてきた筆者には、我が国の現代の様々な芸術活動には何かしら一面的で、奥深い日本の伝統の感性と表現が、あらゆる領域で欠落しているように思える。


世界初の女流文学の源氏物語などは、平安期に日本人の美意識がたどり着いた、広い意味での「粋と色気」、そして「もののあはれ」に、さらに究極は「幽玄」の境地に行き着いた。内海氏は一連の作品でその事に取り組んできたのではと思う。


未来仏の予言は待てないが、出来ることから始める

喜びも悲しみも宇宙の摂理の中で、命尽きると意識も肉体も全て消えて無になり、宇宙の物質に戻る。その間人は煩悩に生き幸せを求め、死後の世界まで詮索し、夢想し、幻想を抱く。その煩悩の人間界の坩堝から何かを見出し、自己実現に生きるが、すべては夢幻である事に気づき、信じる神仏に祈る。が、唯一の未来仏である弥勒菩薩は、数十億年後に現れて全ての煩悩は救われると言う。


それは銀河宇宙の片隅の太陽系の太陽が、超新星となり寿命尽き、光になり、太陽系全てが宇宙の塵になる時という事らしい。とても待てない悠久の約束である。


日本人にとってその解決策は、自然崇拝の中で「粋と色気」に生き、もののあはれのさらに幽玄の美にたどり着く事であろう。


その間も人類はいつまでも喜び悲しみ苦しみ、争いつづけるのだろうか。この度のウクライナの大事件はその一環の物質文明の経済活動ではあるが、なんとも浅ましく、悲しい現実である。


そんなことをものともしない、明るく屈託のない手本がおかげ横丁の踊る猫である。それも伊勢の神様とどう繋がるか。そういえば天照大神の祠の前でベリーダンスを踊った女神もいたではないか。やはり縄文を引き継いだ弥生の神々のルーツは中近東にあるのだろう。


縄文文明は世界に先駆けた 女性優位の自然人間文明

現代の日本には縄文文明の基礎があり、それは世界に先駆ける文明であったと最近言われ始めた。以下のような優しくて抽象的な、現代美術の数千年以前にわれらの列島には先進文明があったではないか。ヘンリームーアの現代彫刻を越える、謙虚で自信を持っての造形力は、どれほどのものとも言いようがないくらい高貴である。


縄文のビーナスは西洋のリアリズムを遥かに超え、高度な色気と粋の優しくて健康的な母性の表現は、これの右に出る人類のビーナス像を知らない。


何と雄大な女性観、ダイナミックで粋な肝っ玉女神は何を言いたいのだろう


抽象的造形要素のモダンファッションデザイナーが、美しい女性が既に列島にいたのだ


私たちはこの伝統の上に心の文明を、新たな美を模索する

近年流行るアニメの先駆も、鳥獣戯画の鳥羽僧正、浮世絵の北斎。北欧の戦争を見事阻止した日本人新渡戸稲造氏なども。筆者のふるさと千葉県東総地区には、世界の農協の始祖大原幽学、無線七宝が世界で称賛された工芸家濤川惣助、世界一正確な地図に西洋人も驚いた伊能忠敬などがいた。

現代は古代から人の命や地域の人々の心を伝統大切にした先人をこそ英雄と称したい。

この混沌の現代時代に、未だ多くの人の命を、女子供まで皆殺しにしてやまない戦国武将を、政策に行き詰まり半島に侵攻し、多くの兵や民を、自国の兵の命をも多く落とした者を英雄扱いするのはそろそろ止めよう。被害にあった人々への配慮のなさをかえりみず、自治体がイベントで大騒ぎをするのでは、今や世界平和を願う心に反する。


公共環境は白黒グレー自然素材色で「粋と色気」の伝統文化も引き立つ

JR岐阜駅前再開発は伝統の粋との色気を大切に考えた墨色現代環境


筆者の取り組みは、伝統の意味と日本文化の感性と奥深い表現を、粋と色気と、もののあはれをも加味し、殺風景な或いは軽薄で味わいのない日常の現代空間と都市環境を甦らせようとしてきた。


心の時代には健康的で前向きな活動と、穏やかで静かな日常環境がベースになる。暮らしや日常の社会環境は絶えず揺れ動くが、基本となる心は安心感を持続的に維持継続できることが大切であると思うからである。


それは慈しみと思いやりを共有できる社会環境に、より穏やかな景観が必要条件になる。特に公共環境は白黒グレーが基本であり、視覚弱者に注意喚起の黄橙が大切である。そして人の服装や植物が映え日本人の肌色も美しく見える。それが粋であり暮らしに幾分かの色気も添えることになる。その事例はJR岐阜駅前再開発に実践している。目立たないが東アジア5千年の理想の都市環境づくりの四神相応とその色彩も配慮している。


現代的素材であるアルミニューム、ステンレス、スチール、ガラス、セラミックにアスファルト、一部木材と、温かい照明とで地上の入り組んだ車交通と、歩行者のスカイデッキの抱擁する大きなカーブと、東西南北への歩移動線が中央の広場を囲む形は、有機的に生き物のように秩序を保っている。


基本はアスファルトの黒色とコンクリートのライトグレー、広場の地元特産のタイルと、廃棄物ヘドロをタイルに焼いた中間グレーを、汚れが目立たない通路のに用い、とにかく無彩色のトーンと、ステンレス、アルミ、ガラスで構成し、照明の光で空間全体の伝統モダンに粋と色気が感じられる演出である。


シェルターの屋根はアルミが夕刻でブルーがかって見えている。いずれにしても公共環境は無彩色が原則であり、そこに交通標識や案内表示が機能する。路面は白線と黄色でしっかりと管理維持し、そのほかの色は使う必要はない。近年赤や青色などを無闇に使うが、不要であるばかりか景観的にも混乱を招くので要注意である。


公共環境にも恐れずに墨色を使おう 日本の伝統の粋と色気で未来空間を創ろう


墨色空間は夜ではさらに粋と色気が照明で豊かに見える


墨色空間は必要な色と互いに響き合い 日本人に似合うイベント空間になる


伝統の意味と日本文化の感性と奥深い表現を、粋と色気と、もののあはれを、殺風景な或いは軽薄で味わいのない日常の現代空間と都市環境に甦らせよう。


心の時代には健康的で前向きな活動と、穏やかで静かな日常環境がベースになる。暮らしや日常の社会環境は絶えず揺れ動くが、基本となる心は安心感を持続的に維持継続できることが大切である、それが日本の伝統であり、日本人が美しく見える白黒グレーの効用である。


それは慈しみ思いやりを共有できる社会環境、より穏やかな景観が必要条件である。子供から大人、高齢者まで、孤立させない、自殺や犯罪に走らせないために。


児童生徒の自殺や、若者の犯罪や、少子高齢化社会での健康や介護の大きな負担を、少しでも緩やかな気持ちで解決誘導出来る環境を、デザイン・色彩の役割として取り組もう。


ところで子供は屈託なく素直に 粋 色気 そしてもののあはれまで表現できるのでは

未来は子どもに夢を託そう・・・


続く・・・


寄稿文 一舟・光秀(林 英光)



環境ディレクター
愛知県立芸術大学名誉教授
東京藝術大学卒業


※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。

発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)



アーカイブ リンク記事をご覧ください。


伊勢神宮外宮参道


天皇皇后両陛下 天照大御神へのご報告 優しく手を振ってくださいました。(外宮にて)


~「平成」から次代へ 感謝と祈りのお伊勢参り~

本年は、約 200 年ぶりとなる天皇陛下の生前御退位及び皇太子殿下の御即位が行われる予定であり10連休となる中、「国民こぞって言祝ぐ」雰囲気になることが予想されます。

また、伊勢神宮は皇祖神である天照大御神を祀っており、正宮は一般的には日頃の感謝を伝える場所とされていますので、平成を無事に過ごせたことへの感謝と次代も無事に過ごせますようにと祈りに、日本人の「心のふるさと」と称される伊勢神宮へ訪問する絶好の機会となります。

伊勢神宮では 20年に一度の式年遷宮により、社殿をはじめ御装束( おんしょうぞく) 神宝 (しんぽう )をそのままの形で新しく造り替えます。

(詳細は本文にて・・・)


伊勢神宮内宮 五十鈴川と御手洗場

「御裳濯川」とも呼ばれる五十鈴川は、倭姫命が御裳のすそを濯いだことから名付けられたと伝えられています。今も変わることのない澄んだ流れの五十鈴川、身も心も清めお参りしてください。

写真の石畳を敷き詰めた御手洗場は、元禄5年(1692)5代将軍徳川綱吉※の生母、桂昌院が寄進したと伝わっています。

※因みに、江戸幕府5代将軍徳川綱吉は「生類憐みの令」を制定しました。

(詳細は本文にて・・・) 


ZIPANG-3 TOKIO 2020 ~平成最後のお伊勢参り~「『平成』から次の時代へ 感謝と祈りのお伊勢参は 『常若』の精神に通ずる!」
https://tokyo2020-3.themedia.jp/posts/5673545



斎王まつり 斎王

斎王とは?

斎王(さいおう)…それは、天皇に代わって伊勢神宮の天照大神に仕えるために選ばれた、未婚の皇族女性のことである。歴史に見られる斎王制度は、天武二年(674)、壬申(じんしん)の乱に勝利した天武天皇が、勝利を祈願した天照大神に感謝し、大来皇女(おおくのひめみこ)を神に仕える御杖代(みつえしろ)として伊勢に遣わしたことに始まる。

以来、斎王制度は660年以上にわたって続き、60人以上の斎王が存在した。伝説は、伊勢に天照大神を祀った倭姫命(やまとひめのみこと)など、さらに多くの斎王の物語を伝える。

制度が確立して以降の斎王は、卜定(ぼくじょう)という占いで選ばれ、斎王群行と呼ばれる五泊六日の旅を経て伊勢へと赴いた。その任が解かれるのは、主に天皇が代わったときのみ。年に三度、伊勢神宮に赴く以外は、一年のほとんどを斎宮で過ごし、神々を祀る日々を送っていた。また、神に仕える身ゆえに恋をすることも許されず、伝説に語られる斎王の中には己の命を絶って身の潔白を証明した哀しい斎王や、恋ゆえに斎王を解任されたり、恋人と引き裂かれたりした斎王もいたのである…。

(詳細は本文にて・・・)


斎王まつり 行列(三重県明和町「斎宮」にて)


ZIPANG TOKIO 2020 「特別編 斎王~明和町より~伝説と歴史が伝える歴代の斎王74名について」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/3020519



天の岩戸 恵利原の水穴

伊勢志摩国立公園内の逢坂山の中腹にある洞窟から湧出しており、志摩用水の源水となっています。涸れたことのない清い水は、天照大神が隠れ住まわれたと伝えられる伝説の場所。天の岩戸の伝説とともに、古くから地域内外の人々の信仰を集めています。

(詳細は本文にて・・・)


志摩 天照大神の隠れ家へ・・・


ZIPANG-2 TOKIO 2020「天照大神の隠れ家伝説 天の岩戸 恵利原の水穴(志摩市)」
https://tokyo2020-2.themedia.jp/posts/4435926



津和野に行きたくなりました・・・大きくて見事な紅色の花の百日紅ですね~。
漆喰の白壁に石州赤瓦がよく似合っています。

きっと、いつの日か花菖蒲は咲いて、川にはいつも錦鯉が泳いでいるのでしょうね~
景色は刻々と変化してゆきますが、人情だけはいつまでも変わらないで欲しいですね…


現代の「つわぶきの里」SLの紫煙、そして森林の上の朱色の鳥居。まるで、石州赤瓦のためにあるような景色ですね~田んぼの緑も目に鮮やかです。


「つわぶきの里」伝説

津和野は「つわぶきの生い茂る野」をその名のルーツにもつといわれています。

遠い昔、山紫水明 のこの地に住みついた人々は、群生する「つわぶき」の可憐な花に目をとどめ、その清楚で高雅な風情に魅せられ、自分たちの住む里を「つわぶきの野」・・・ 「つわの」と呼ぶようになったという。


「縄文と赤」と聞くと真っ先に頭に浮かぶのは、芸術家「(故)岡本太郎」氏。
以前聞いたお話をご紹介します。

カメラを向けると今にも「爆発」しそうな位に眼光鋭く睨み返された・・・
つまらない質問をすると、何も言わずプイッと二階に上がってしまい30分どころか1時間も2時間も戻ってこられなかったのには…敏子さんが「出直して来られたら」と…
それでも辛抱強く待つしかなかった…今思うと忘れられない想い出です❣

良い経験だったのかな~❓


Q、岡本先生は何色がお好きですか?一般的に大人になると色の好みが変わってくるんでしょうか?

僕はそういうことはないです。僕は赤が好きなんですけどね、それに対抗するブルーとか。

あらゆる色が好きですが、特に赤が印象的な理由は、赤というのは、命そのものみたいなところがありますよね。血液の色、血だらけになった時などの。そして赤は死を意味するし、また逆に生きてることも象徴するしね。原色は昔からずっと好きです。

Q、パリ以外で、印象に残っている日本の町は?

大分ですね、母の生まれ故郷で子供の頃疎開していたからね。

Q、そう言えば、大分駅の南出口正面の薬局のビルの壁面が岡本先生の作品でビックリしました。薬局のご主人に尋ねると「間違いなく岡本太郎先生の作品です。断られて元々と思って手紙で依頼したところ、大分は母のふるさとだからといって引き受けていただいたのには、依頼したほうが本当に驚きました」って言っておられましたよ。

他には『何だ、これは!』という町はありませんか?

そう。そんなに喜んでもらえれば嬉しいですね。

う~ん。新潟や…特に印象に残っているのは、出雲大社や石見銀山のある海に面したすべて赤で統一された瓦屋根の町とそれに対抗する日本海の深い青の海の色です・・・

続きは機会があればご紹介いたします。

今は亡き、しかしいつもお側に感じる岡本太郎先生を偲びながら〜 合掌

(詳細は本文にて・・・)


ZIPANG-2 TOKIO 2020~石州瓦物語 続編(その1)~「石州赤瓦の似合う町をたずねて 。日本で唯一、   聖母マリアが降臨された地 ~津和野~ 」
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ZIPANG-7 TOKIO 2020

これまでの、日本の精神文化と国土の美しさについて再発見に加えて その1. 全世界との情報の共有化 その2. 偏り、格差のないローカリティの尊重! その3. 美しきものへの学び、尊敬、関心を高める教育と推進

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